
防災の日に、"備蓄"の先を ― いちばんの備えは、人とのつながりでした
今日、9月1日は「防災の日」です。
1923年のこの日、関東大震災が起きました。その教訓を忘れないために定められた日であり、8月30日から9月5日は「防災週間」でもあります。一年でいちばん、世の中が防災に目を向ける一週間です。
だから今日は、備えの話をします。ただ——いつもの「備蓄しましょう」で終わるつもりはありません。私が本当に伝えたいのは、その先にあることだからです。
まず、モノの備え(自助)を、正しく
最初に、基本を正確に。これはこれで、大事です。
水は、1人1日3リットルが目安。食料は、最低3日分、できれば1週間分。とはいえ、非常食を一気に買いそろえる必要はありません。ふだんの食材を少し多めに買い置きし、古いものから使って、使った分を補充する。この「ローリングストック」なら、無理なく続けられます。冷蔵庫や台所を見渡せば、最初の数日はしのげる量が、意外とあるものです。
あわせて、非常持ち出し袋と、自分の家のハザードマップの確認を。ここまでが、いわゆる「自助」——自分と家族を、自分たちで守る備えです。
でも、私が現場に立ってきて感じるのは、モノをそろえるだけでは、守りきれないということです。
いちばん危ないのは、「孤立」
消防・救急の仕事をしていると、痛感することがあります。危機のとき、いちばん危ないのは、ひとりきりであることです。
以前、熱中症について書きました。畑でひとり作業していた高齢の方が、夕方になっても帰らず、家族が探しに行くと倒れていた——助けることができなかった、という話です。もし誰かがそばにいたら。もし「暑いから休みなよ」と声をかける人がいたら。結果は違ったかもしれません。
災害でも、同じです。私たちが応援に駆けつけても、被災地の側に「誰が助けを必要としているか」「どこで受け入れるか」という備えがなければ、駆けつけた力は、なかなか届きません。助けようとする側と、助けられる側を、つなぐものが要るのです。
つまり——どれだけモノを備えても、人とのつながりが切れていると、その備えは活きない。ここに、私がずっと考えてきたテーマがあります。
受援力は、市民にも要る
「受援力」という言葉があります。災害時、被災した自治体は自力では回りません。だから、外からの応援をいかにスムーズに受け止められるかで、その後が決まる——そういう考え方です。私はこれを、自治体だけの話だとは思っていません。
受援力は、市民一人ひとりにも要ります。それは、三つのことです。
一つ、助けを求める力。「迷惑をかけたくない」「自分は大丈夫」という遠慮や過信が、いちばん危ない。「助けて」と声を上げられることは、弱さではなく、備えです。
二つ、助けを受け入れる力。差し出された手を、素直に取れること。
三つ、助け合う力。隣の人を、気にかけること。声をかけること。
モノの備えが「自助」なら、これは「共助」であり、市民の受援力です。そして、いざという時にいちばん命を守るのは、実はこちらだと、私は感じています。結局は、人と人のつながりが、いちばんの備えなのです。
防災の日に、“人の備え”を一つ
では、つながりを、どう備えればいいのか。防災の日の今日から、できることを挙げます。
家族で、安否確認の方法を決めておく。大きな災害では、電話がつながりにくくなります。そんな時のために、災害用伝言ダイヤル「171」や、災害用伝言板「web171」があります。仕組みはシンプルで、自分の電話番号を使って伝言を残すと、家族はその番号を入力して、あなたの伝言を確認できます(171は音声、web171は文字)。だからこそ、ふだんから家族どうしで電話番号を把握し合っておくこと、そして携帯を持たない子どもや高齢者がいるなら、自宅の番号など「共通で使う番号」を一つ決めておくことが大切です。防災週間や毎月1日・15日には体験利用ができます。今日9月1日も、その体験利用日です。家族で一度、試してみてください。
集合場所を決めておく。はぐれた時、どこで落ち合うか。家族で共有しておくだけで、安心が違います。
ご近所と、顔の見える関係を。誰が高齢で、誰が助けを必要としそうか。日頃の「こんにちは」の一言が、災害時の共助の土台になります。
そして——「助けて」を、言えるようにしておく。これがいちばん難しく、いちばん大切かもしれません。
おわりに
防災の日は、備蓄を見直す日として知られています。もちろん、それも大切です。でも、どうか今日、モノの点検と一緒に、もう一つ点検してほしいのです。
あなたの周りの、人とのつながりを。
いざという時、あなたを守るのは、備蓄の水や食料だけではありません。声をかけ合える家族、隣人、そして「助けて」と言えるあなた自身です。
いちばんの備えは、人と人のつながり。それが、市民の安全と安心のために、防災の日に私がいちばん伝えたいことです。