受援計画の訓練、市町村は1割強 ― 国の調査を団体別に集計してみた


以前、「作った受援計画、最後に開いたのはいつですか」という記事を書きました。そのなかで、受援計画を使った訓練をしている市町村は1割強、と書いています。

この数字は、国が公表している数字そのものではありません。国の調査には団体ごとの回答一覧が付いていて、それを私が数えたものです。この記事では、その集計の中身を、グラフと一緒にもう少し詳しく残しておきます。

何を数えたのか

元にしたのは、内閣府と消防庁が毎年行っている「地方公共団体における業務継続計画・受援計画策定状況の調査」です。最新の結果は令和8年3月19日に公表されたもので、令和7年4月1日現在の状況です。

国が公表している数字は「受援計画を策定しているかどうか」までです。ただ、資料の後ろの方(別紙2)に、都道府県と市町村ごとの回答一覧が載っています。そこには、受援計画に何を定めているか、受援計画に基づいた訓練をしているか、といった欄があります。

この一覧を1団体ずつ数えました。数え漏れがないかは、策定済みの市町村が1,433団体と、国の公表値と一致することで確かめています。

策定は8割、訓練は1割

まず、全国の市町村1,741団体を、策定と訓練の段階で並べてみます。

全国の市町村(1,741団体)のうち
全市町村 1,741団体
受援計画を策定済み 1,433団体(82%)
計画に基づく訓練を実施 172団体(10%)

策定している市町村は8割を超えています。一方で、その計画を使って訓練をしている市町村は172団体です。策定済みの1,433団体のなかで見ると、12%。8団体のうち7団体は、計画を使った訓練をしていないことになります。

都道府県と市町村の差

同じ「策定済みのうち訓練をしている割合」を、都道府県と市町村で比べます。

受援計画を策定済みの団体のうち、計画に基づく訓練を実施している割合
都道府県 66%(31/47)
市町村 12%(172/1,433)

都道府県は3分の2が訓練をしています。市町村は1割強です。

応援職員が実際に入って働くのは、市町村の現場です。避難所の運営も、住家の被害認定も、罹災証明の発行も、最前線は市町村です。受援の最前線ほど、計画を試す機会が少ない。この差が、集計していちばん気になったところです。

計画に書かれていること、書かれていないこと

別紙2には、受援計画にどんな項目を定めているかも載っています。策定済みの市町村1,433団体について、主な項目を数えました。

受援計画を策定済みの市町村(1,433団体)のうち、その項目を定めている割合
受援を調整する部署 95%
応援職員に頼む業務 80%
業務ごとの調整担当者 76%
活動拠点のリスト 69%
宿泊場所のリスト 25%

「誰が調整するか」は、ほとんどの計画に書かれています。ところが、「どこで受け入れるか」「どこに泊まってもらうか」と、具体的な場所の話になるほど、書かれている割合は下がっていきます。宿泊場所のリストがある計画は、4分の1ほどです。

令和6年の能登半島地震では、宿泊場所が確保できず、庁舎の会議室や車の中で寝泊まりした応援職員がいました。宿泊拠点から被災地まで、片道7時間を超える移動をした例もあります。計画に場所が書かれていないことは、発災当日、その場で探すことを意味します。

この数字の読み方の注意

集計した数字を使うときに、気をつけておきたいことがあります。

  • 調査は、各団体の自己申告です。「計画に基づく訓練」としてどこまでを数えるかは、団体によって差があると思います。
  • 「訓練を実施していない」と数えたのは、一覧で実施と答えていない団体です。県の訓練に参加している市町村が、自分の団体の訓練として答えているかどうかは、この一覧からはわかりません。訓練の欄が空欄の団体が2つあり、これは実施に含めていません。
  • 項目の欄は「定めているかどうか」です。中身が実際に使える内容かどうかまでは、わかりません。

それでも、策定の数字だけでは見えなかった差が、団体別の回答を数えると見えてきます。

おわりに

受援計画の策定は、この10年で確実に進みました。次の段階は、その計画を動かしてみることだと思います。訓練をすると、書いてあるのに誰も知らない手順や、決まっていない場所が見えてきます。

計画を「ある」から「使える」へ。そのための一歩として、この集計が役に立てばと思います。

集計した数字(一覧)

区分 団体数 割合
全市町村 1,741 ―
受援計画を策定済みの市町村 1,433 全市町村の82.3%
うち計画に基づく訓練を実施 172 策定済みの12.0%
うち訓練を実施していない 1,259 策定済みの87.9%
うち訓練の欄が空欄 2 ―
計画に基づく訓練を実施している都道府県 31 47団体の66.0%
策定済み市町村が定めている項目 団体数 割合
庁内の受援を調整する部署 1,368 95.5%
応援職員に頼む業務 1,141 79.6%
業務ごとの調整担当者 1,094 76.3%
応援機関の活動拠点のリスト 986 68.8%
応援職員の宿泊場所のリスト 354 24.7%

割合は、策定済みの市町村1,433団体に対するものです(全市町村の行を除く)。

参考資料

  • 内閣府(防災担当)・消防庁「地方公共団体における業務継続計画・受援計画策定状況の調査結果」(令和8年3月19日公表、令和7年4月1日現在)
    訓練の実施状況と計画の項目の割合は、同資料の団体別一覧(別紙2)を筆者が集計
    https://www.soumu.go.jp/main_content/001061265.pdf
  • 中央防災会議 防災対策実行会議「令和6年能登半島地震を踏まえた災害対応の在り方について(報告書)」令和6年11月
    https://www.bousai.go.jp/jishin/noto/taisaku_wg_02/pdf/hokoku.pdf